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2024年05月19日
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忍者娘の話

2011年12月18日
ちょっと前からストップしてる忍者娘の話をさらしてみる。
オチが決まらんのだよ、オチが……!

※中途半端に終わってます。もしかしたら追記する、かも。


 彼女の名前は、瀧辺みかさ。現在高校一年生。瞳は漆黒、髪は黒く長いストレートで、いつもポニーテールをしている。
 彼の名前は、弘瀬良明。現在高校一年生。瞳は黒く、髪も黒く短く、少しくせが入ってぼさぼさである。
 一見すればごくごく普通の二人であるが、いや、彼のほうは当たり前にごくごく普通なのだが、もう一人――彼女のほうがあまり普通ではないのである。

「良明ってさあ、あたしのどーいうところが好きー?」
「はい?」
 学校が終わると、部活に所属していないみかさと良明はいつも一緒に帰っていた。二人は幼馴染であり、そして、友達以上な関係でもあった。
「何、何て言った?」
「だーかーら、あたしのどういうところが好きなの? って聞いたんだけど。良明の耳って節穴?」
「耳に節穴って言うのはなんか変なような……えーっと、でも、何で?」
「だって、気になっちゃったんだもん」
 そう言って、みかさは良明の腕に抱きついた。良明は顔色一つ変えず、「なんだよ、急に」と尋ねる。
「ねえねえ、教えてよ」
「別に。幼馴染だから、何が好きとかない」
「はあ?! 良明って、あたしのことなんだと思ってんの?!」
「幼馴染」
 友達以上な関係でもあり、恋人未満な関係でもある。良明の答えを聞いたみかさは不満そうにむっと表情を曇らせた、が。
「……」
「……みかさ?」
 歩いていた良明は、突然視界から消えたみかさの名を呼んだ。みかさは良明より数歩後ろにじっと立っていて、あたりを目だけで見回していた。明らかに様子の違うみかさを見て、良明はみかさの隣に立った。
「みかさ」
「良明、あたしのそばから離れないで」
 みかさは早口で言うと、良明の手首を掴んだ。ぎゅっと強く握られた手首を良明はちらりと見たあと、みかさの横顔を見る。みかさは、真っ直ぐ前を見つめている。
「いるならさっさと出てきなさいよ、まどろっこしい」
「ふふっ」
 みかさの声に答えたのは、少女の笑い声。それと同時に、みかさと良明の目の前に、一人の少女が現れた。
 少女の髪は明るい茶色、というよりは金に近く、肩にかかるほどの長さだった。瞳の色は黒に近い深い緑だった。見た目からすると、良明やみかさよりも年下のようで、くりっとした大きな瞳が特徴的だった。しかし、そんな幼げな顔つきに似合わないような、にやりとした笑みを少女は浮かべている。
「あんたが瀧辺みかさ、か」
「……だとしたら、何」
「ふーん? てっきり、もっとすごそうなヤツだと思ったんだけど。なんか、全然フツーじゃん」
「全然のあとは否定語……」
 少女の言葉に、ポツリと良明が零した。方向の違うツッコミに対し、みかさは咳払いをして少女に尋ねた。
「で? そういうあなたは誰かしら?」
「我が名は日鳥菜央! 次期日鳥流当主である!!」
 問われた少女――日鳥菜央はみかさに向けて指をさした。何故か、勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
「……で? ひどりんは何の用事?」
「なっ?! 何だ、その呼び方!」
 いらだったように、菜央は叫ぶ。しかし、みかさは呆れたような表情で、小さくため息をついた。
「まあ、いい。悪いが瀧辺みかさ……否、瀧辺流当主よ、貴様を倒して、瀧辺流忍法をぶっ潰させていただく!」
「大したもんじゃないから、やめたほうがいいわよ」
 勢いよく言った菜央に対して、みかさは冷静に返した。あまりの温度差に、隣で様子を見ていた良明はぱちぱちと瞬きをしていた。
「なっ、なっ、何ィィィィィ?!」
 菜央は叫ぶ。まだ出会って数分程度しか経っていないが、みかさも良明も何度目かの菜央の叫び声を聞いた。
「お、お前! わ、わたしの挑戦を、勝負を、受けないってつもりなのかぁ?!」
「うん。だって、ひどりんの勝負を受けなくても問題ないし?」
 みかさを指さす人差し指が震える菜央。指さされているみかさは首をかしげて言ったあと、隣の良明の腕に抱きついた。
「ねー、良明」
「あー、うん。そうだな」
「お前までなんだと?! っつーか、お前誰だ!」
「あ、どうも。弘瀬良明と申します」
 平然と返す良明に、菜央はとうとう指を下ろした。
「くっ……だが、わたしは瀧辺流を潰さなければ、日鳥流の当主になれないのだ……!」
「ふーん、大変ねえ」
「みかさ、協力しないのか?」
「良明が言うなら協力してあげるわ」
 良明に言われたみかさは頷き、ぱっと良明から離れた。それから菜央の前に立った。
「ぎゃふん」
「……へ?」
「はい、あたしぎゃふんって言った。だから倒されました。ついで言うと、瀧辺流ぶっ潰れました。さあさあ、お帰りください」
 早口で言い終えると、みかさはさっさと菜央に背を向け、また良明の腕に抱きついた。
「……ふ、ふざけてんのかお前!!」
「ふざけてないわよ。あたしと良明の平和な日常を送るために、瀧辺流を犠牲にしただけよ。だから、あたしは普通の女の子に戻りました」
「ふざけるな!!」
「ふざけてないって言ってるでしょ!」
 とうとう、菜央の叫びにつられるように、みかさも叫び声をあげた。
「いい?! これはね、あんたとあたしの問題じゃない! あたしと良明の大っっ切な日常を送れるかどうかって問題なのよ?!」
「大げさな……」
「大げさじゃないわよ!」
 良明の小さな呟きにみかさは怒鳴った。その表情は真剣そのもので、視線はにらみを含んでいるようだった。みかさの表情を見た菜央は、先ほどまでの苛立っていた様子をすっと消して、にっと余裕そうな笑みを浮かべる。
「なるほど。つまり、お前にとって大切なものは、そのヨシアキっていう男との日常ってわけだな」
「そうよ。だからさっさと帰っ――」
 そのとき、みかさの頬を風が掠めた。風の吹いたほうを向けば、そこに菜央の横顔があり、それまでそこにいたはずの良明の姿がなかった。
「え」
「つまり」
 どっ、と低い音がみかさの耳に届く。菜央の拳が、良明の腹に入っている。良明の目が一瞬大きく開かれたが、すぐに閉じた。そのまま、良明の上半身は菜央の腕に倒れこむ。ほんの、数秒の間の出来事だった。
「この男が、お前にとって大切なものということになるわけだ」
 菜央の言葉に、みかさの顔から血の気がさあっとひいた。顔色は青、というよりは白くなっていた。菜央は、にやりと笑った。
「ひどりん?! 良明は関係ない! 放しなさい!!」
「悪いが、そういうわけにはいかない。わたしには、瀧辺流を潰す、という役目があるのだから」
 そう言って菜央は肩に良明の腕をかけ、みかさのほうを見た。
「瀧辺みかさ。もしこいつを返してほしければ、わたしと戦え。場所は、港の使用されていない倉庫。わたしはそこにいる。まあ、ずっと待つのも面白くないから、期限は今日の午後九時までとしよう」
 くくく、と菜央は笑った。みかさは大きく目を開き、口を中途半端に開いている。
「ふっ……ふざけないで!」
「ふざけているわけないだろう? わたしだって本気だ。ただ、お前を本気にするにはこれぐらいしないと、なあ?」
 そう言って菜央はしゅっと音を立てて跳躍し、姿を消した。
「待っているぞ、瀧辺みかさ!」
 あたりに、菜央の声が響く。みかさは呆然としたままで、その場に立ち尽くしていた。


「別にいいのよ、あんたは瀧辺流を受け継がなくても」
 それは、みかさの幼い頃の記憶だった。
 ぼろぼろになって帰ってきた母を見て、みかさは大泣きしながら母の胸にしがみついた。母は笑っていたが、その笑みが何故かみかさには泣きそうな顔に見えた。
「忍者なんかねえ、やっててもいいことないわよ。こんな風にぼろぼろになっちゃうし、お父さんとも会えないし」
「じゃあ、なんでおかあさんはにんじゃをつづけるの?」
 みかさは鼻をすすりながら母に尋ねる。母はみかさの頭を撫でながら答えた。
「みかさには覚えててほしいんだけどね、瀧辺流は受け継がなくてもいい。でも、その力はいつか使えるようになる」
「……どういうこと?」
「そうねえ、みかさには難しいかあ」
 どういえば良いかしら、と母がみかさから視線をずらした。そこにいたのは、みかさの父だった。
「あたし、こういうの説明するの下手なのよねえ。あなたの方が得意でしょ?」
「そうだなあ、こう言えばわかるかな」
 今度は、父がみかさの頭に触れる。髪を撫でながら、優しい笑みを浮かべて言った。
「いいかい、みかさ。お前の力は瀧辺流のためにあるんじゃない。お前のためにあるんだぞ」
「わたしのため?」
「そう。使うときは自分の意思で使うんだ。お前が、本当に使いたいと思うときに」
「……ほんとうに、つかいたいとおもう……」
「じゃあ、お母さんから一つだけおねがい。その力はなるべく、誰かのために使ってあげて」
 その母の言葉は、みかさの記憶の中でも聞いたことないほど、優しく穏やかなものだった。驚くくらい優しい声に、みかさは大きく目を開いて母を見た。
「自分のためだけに使ったら、寂しいでしょう? だから、あんたが一番大切、って思う人のために使ってね」
 ある日、みかさの母は任務の途中、敵に追われて重症を負った。死ぬなら家がいい、と言ってた彼女だったが、重症を負った状態で追われてしまえば、家が特定されてしまう。それは、彼女にとって大切な家族が危険に晒されてしまうことを意味していた。彼女は自分の任務を別の忍者に託し、そのまま、どこかの森で息絶えた。
「自分のためだけに使ったら、寂しいでしょう?」
 それは、まるで、自分自身に言っていたようだった。そのときの優しい声と悲しい顔を併せ持った母を、みかさはずっと忘れることが出来なかった。
 だから、みかさは瀧辺流の忍法などにはこだわっていなかった。誰かがほしい、と言えばすぐに譲っても良かった。
 しかし、彼女には譲れないものがあった。


「ほう、ちゃんと来たな、瀧辺みかさ」
 良明は、ぐらぐらする意識の中ではっきりとした菜央の声を聞いた。重いまぶたを重力に逆らいながら開いて、あたりが薄暗いことを認識した。もう夕方だろうか、と思いながら良明はあたりを見た。視界の中に、菜央と、みかさの姿があった。
「……良明を、返して」
 聞きなれない、低い声。菜央の目の前に、みかさが立っていた。みかさは、じっと菜央を見つめている。
「み……かさ、……」
「もう一度言うわ、ひどりん。良明を、返して」
「なら、わたしと戦え」
 菜央は真剣な声で言う。止めなければ、と良明は思ったが、上半身はロープでぐるぐる巻きにされて、足首のあたりもロープで縛られていて動くことができない。
「わかった。あたしが勝ったら、良明を返してくれるんでしょ」

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