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2024年05月19日
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魔法少女(仮) 序章

2013年03月09日
わかるひとにはわかるネタ。とりあえず途中までだけどおいてみる。

 
「これで、いいんだ」
 魔法使いの微笑みは、穏やかなもの。それを見ている彼も、笑みを浮かべた。それは、魔法使いのものと違って、ぎこちないものであった。
「本当に」
 それでいいのか、と彼が続けるよりも、魔法使いが頷く方が早かった。
「ありがとう」
 魔法使いは、笑う。床に描かれた大きな魔法陣には、彼には理解することのできない文字列や記号が記されている。その中心に立つ魔法使いは、天井を見上げていた。
「これで、いいんだ」
 天井にも、床と同じように大きな魔法陣が描かれている。その大きさから、これから行われることの壮大さが、伝わってくるようだった。
「……」
 もしも、ここで名前を呼んだなら。彼の思考がそこに至った時だった。
「待て!!」
 扉が開かれる大きな音と、叫び声。魔法使いも、彼も、同じ方を向いた。
「……君は」
「やめてくれ」
 彼が尋ねるよりも先に、扉を開けた人物が魔法使いに言う。魔法使いは一瞬、驚いたような顔を浮かべたが、すぐに笑みに戻る。
「ありがとう。でも」
「やめてくれ!! 頼むから」
「もう、限界なんだ」
 魔法使いの言葉に、二人の目が同時にはっと開かれた。
「ごめん」
 がこん、と大きな音が響く。それは、この建物の最上階にある、大きな時計の針が、動く音。
「それでも」
 床と天井の魔法陣が、光を放つ。黄色、青色、橙色、桃色、緑色、白色、黒色。さまざまな色が、魔法陣の中心に立つ魔法使いの姿を歪ませる。
「ありがとう」
 最後の一言。二人の視界は光に包まれ、魔法使いの姿を完全に見失わせた。
 光が消えたとき、先ほどまで魔法陣があった場所には大きな柱が出来ていた。そこには、やはり彼らには理解できない記号と文字が記されており、それが魔法使いの魔法によって作られたことを物語っていた。
 
――これは、古の物語
 
***

――それは、現の物語
 
 学園都市の中心に立つ、巨大な時計塔。その中心には大きな柱が建てられている。
 古い言葉なのか、現代の人間では解読できないような細かな文字や記号が記されている柱は、その時計塔の中で異様な存在感を放っていた。
 辺りが闇に包まれる深夜。時計塔の中に、ぼんやりとした影が浮かんでいた。
[……そう]
 風が鳴く低い音が、音声を作り出す。
[願いは、叶えられねばならぬものだ]
 影は柱に近づく。先ほどまで形を保っていなかったそれが、少しずつ、人の姿となってゆく。影は静かに、音もなく柱に手を伸ばした。
「何者だ!!」
 影が柱に触れようとした瞬間、静かな時計塔内に男の声が響いた。ランプを片手にもつ男は、柱に光を当てる。
「……お前は」
[時は来た]
 影が、柱に触れた。直後、時計塔の中に轟音が響き渡る。男ははっと顔を上げ、天井を見上げる。
「まさか……!!」
 天井に、光がともる。それは高速で記号となり文字となり、魔法陣を描き始めた。
「封印を解いたと言うのか!!!」
 男は影に向かって叫ぶ。
[願いは、叶えられねばならぬものだ]
「貴様……!」
 影の言葉に、男は表情を歪ませる。そしてランプを影に向けて、叫ぶ。
「光よ! 彼の者を捕らえよ!!!」
 男の声に応えるように、ランプの光が伸び、影に向かって放たれた。影が全く動いていない様子を見て、男は口元に小さな笑みを浮かべた。
[この程度か]
 光は影をすり抜け、消滅する。あたりが、完全に闇に包まれた。
「……貴様、何を考えている」
[ふふ……]
 影は、嗤う。それと呼応するように、柱に刻まれた文字に光が灯る。
[さあ、始まりだ]
 柱が強く光る。男は腕を顔の前に出し、光を避けた。強い光が、辺りを染める。
「封印が……っ!」
 黄色、青色、橙色、桃色、緑色、白色、黒色。さまざまな光が、柱から、解き放たれた。
 そして、光が消え、再び辺りは闇と同化した。
[……まだ、お前は抵抗すると言うのか。まだ、]
 影は柱に向かって語りかける。しかし、その語りは唐突に途切れた。
「貴様の好きなようにはさせんぞ……!」
 影の身体を貫通するのは、光で出来た剣。男は両手でその剣を柱ごと影に突き刺していた。
[愚かだな……。この程度で、私を止められると]
「光よ、彼の者の時を縛れ」
 男の言葉に、影が揺らぐ。剣は光の粒子となって柱を包み始める。
「……貴様を止めると、誰が言った」
 柱全体がぼんやりと光り、そして再び元の状態へと戻った。
[貴様がいくら足掻いても、無駄だ。もう、始まってしまったのだからな]
 影は嗤い声を残し、そして、姿を消した。
「……始まって、しまったのか」
 男は柱を見上げ、小さく零す。柱は、沈黙を保ったままだった。
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